痛風という病気をご存じですか?名前を聞いたことのある方は結構多いと思いますが、いったいどんな病気なのかというと、意外と知られていないようです。全然聞いたことがない方でも、名前から「痛そうだ」という感じは分かりますね。本当に痛いのです。風が吹いても痛いので、この名前がついたと言われるほどです。
どこが痛いのかというとほとんどの場合が足の親指の付け根です。典型的なパターンを挙げてみますと、バリバリ仕事をしている中年男性で、なんとなく足の親指の付け根がむずむずすると思ったら、あるとき突然赤くはれ上がって激しい痛みに襲われるというような具合です。中年男性に多いと言われていたのですが、最近は若い人にも増えています。
原因は体の中のエネルギーの燃えかすや食物中のプリン体という成分から作られる尿酸という物質の血液中の濃度が上昇し、これが結晶になって関節に炎症を起こすのです。膝や足首、アキレス腱の付け根などにも起こります。この痛みは1週間ほどで無くなります。痛みが風のように去っていくのでこの名前がついたという説もあります。
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でも、痛風の怖いところは痛みではないのです。痛みが去っても尿酸が減っているわけではなく、放置しておくと腎(じん)臓をはじめいろいろなところに沈着し、さまざまな障害を起こします。また、肥満、高血圧、高脂血症などの合併により動脈硬化を起こしやすい体質になっていることが多く、心筋こうそくや脳卒中などの危険性も高くなっています。関節炎は氷山の一角にすぎないのです。
こういうと随分と恐ろしい病気のようですが、尿酸値を正しくコントロールすれば痛風発作や腎障害なども予防できるのです。では日常生活ではどのような注意なのでしょうか。まずはカロリーの取りすぎに注意。レバーや肉類、干物にはプリン体が多いので避けましょう。アルコールはすべて尿酸値を上げます。特にビールはプリン体が多いので要注意です。腎臓から排せつされるので水分を十分に取ること。軽い運動は必要ですが激しい運動は尿酸値を上げます。夏の暑い日にのどがからからになるまでゴルフをして、終わった後にビールで乾杯というのは一番悪いパターンです。
次に治療ですが、薬には尿酸の酸性を抑える薬と排せつを促進する薬があります。中性脂肪を下げ尿酸の排せつも促進するという一石二鳥の薬もあります。尿が酸性になると尿酸が溶けにくくなり、尿管結石の原因にもなるので、尿をアルカリ性にする薬も必要になります。どれを使うにしても治療は長期間になりますが決して尿酸値のコントロールは難しいものではありません。「のど元過ぎれば熱さ忘れる」で痛みが治まってしまうと治療に来なくなる方が結構いらっしゃいます。「痛みが無いから治った」と思うのは認識が甘すぎます。痛風の治療は痛みを取るだけではなく、尿酸値をコントロールすることで、腎機能やほかの成人病の合併を予防することが目的なのです。
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