日常の診療の中で「ああ、もう少し早く来ていただければ・・・」と思うことが時々あります。もちろん、手遅れで命にかかわるというのではないのですが、その代表的なものに「肩関節周囲炎」があります。肩関節周囲炎というのは実は一つの病気ではなく、肩の周りのいろいろな部位の障害をひとまとめにしたおおざっぱな病名です。簡単に言うと肩が痛くて動きが悪くなっている状態です。「五十肩」というと多くの方が「ああ」と思うはずです。(厳密にはイコールではありませんが)。なぜ早く来ていただきたいかというと早い時期であれば簡単な運動療法や関節への注射などですぐに治せるものが、時間がたつにつれ拘縮といって関節が硬くなってしまい、治療に難渋することが多いからです。
ではこのような肩の痛みが出たときの対処法をお話します。まず、急に痛みが出て肩が動かせないようなとき。石灰沈着性腱(けん)板炎といって、肩の腱の一部に強い炎症により石灰が沈着している場合が多いのですが、このような場合にはなるべく早く痛みを取らないと急速に関節が固まってしまうこともあるので、患部を冷やし安静を保ち、できるだけ早く受診してください。
次に慢性になっている場合。「なんとなく肩が痛いけれど、日常生活に不自由はないし・・・」と思っている方はバンザイしてみてください。両手が対称に上がっていなければ固まりつつあるのです。そのほかエプロンのひもが結びにくい、おしりのポケットから物が出しにくいなども要注意です。このような場合は、まず固さを取ることが大事です。どこでも簡単にできる体操があるのでやってみましょう。
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① 反対の手で手首をつかむ
② できるだけ上に引き上げる
③ 外側に回しながら下ろす
④ 反対にひく
⑤ 後ろで手首をつかみ反対に引く
⑥ 上に引き上げる
⑦ 前で両手を組みそのまま首の後ろへ
⑧ 両ひじを前後に動かす
決して反動をつけたり、痛いのに無理な力を入れてはいけません。痛みがなかなか取れない場合には、思わぬ病気がかくされていることもありますので、早めに専門医を受診しましょう。
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